「ぴーぷる・ぴーぷ」の地下室




札幌の夜の繁華街すすきの。
たくさんの酔客で賑わうこの街の片隅に、
夜になるとひっそりと明かりを灯す小さなカフェがあります。

札幌の人たちにさえ、少し神秘的な隠れ家的存在のカフェ
「PEOPLE PEAPE(ぴーぷる・ぴーぷ)」。
すすきのの電車通りに面した「パイとケーキのお店」といえば、
思い出す人も多いかもしれません。
大きな店名の看板もなく、
ただ「パイとケーキ」と書かれた看板だけが、店の前にはあります。

このすすきのの片隅で、もう20年以上も、
「パイとケーキ」の店はひたすらに夜を待ち続けていました。

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「パイとケーキ」の看板だけが大きく目立っているので、
この店の名前が「ぴーぷる・ぴーぷ」であることを知る人は少ないかもしれません。
そして、この店がパイやケーキではなく「パフェ」で人気の名店なのだということも、
また多くの人は知らないことでしょう。

そう、「ぴーぷ・ぴーぷ」は、パイやケーキではなく「パフェ」で人気の夜カフェなのです。
 
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1994年に発行された「イエローページ'94」。
「ぴーぷる・ぴーぷ」は、次のように紹介されていました。

愛情を込めて作ったケーキが自慢。バナウニーなどネーミングもユニーク。

どうやら、「ぴーぷる・ぴーぷ」は、歴史の変遷の中で、パフェの名店へと進化していったようです。

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正確な営業開始時間は不明。
太陽が沈んで、すすきのに人々が集まるころ、
気がつけば「ぴーぷる・ぴーぷ」の窓にも明かりが灯っています。
いつでも少し開かれたドアの隙間からは、店内の様子が見えそうで見えません。

そして、この店を初めて訪れるお客さんの誰もが、この古いドアの一歩手前で、
必ずためらったように後ろを振り返るのです。

どうする?とでも確かめるように。

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「ぴーぷる・ぴーぷ」は隠れ家的カフェですが、お店は普通の喫茶店そのもの。
ただ、お店の中は少し小さくて、
注文した品物が出てくるまでにはちょっと長い時間がかかるという、
ただそれだけの普通の喫茶店。

昔のままで時間が止まっているかのような店内の空気は、きっと誰もを幸せにしてくれます。

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派手な宣伝をしているわけでもないのに、全然入りやすい店構えじゃないのに、
「ぴーぷる・ぴーぷ」はいつでもたくさんのお客さんで賑わっています。
古いお店なのに、多くのお客さんは若い女の子やカップルたち。

新しいお店にはない何かを、みんな探し求めているのかもしれません。

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店内が満席になったら、いよいよ地下室の出番です。
そう、「ぴーぷる・ぴーぷ」には半地下になっている狭くて屋根の低い部屋があって、
お店が混雑してきたときには、この地下室が活躍するのです。

まさしく、不思議空間、不思議カフェ。

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今夜も「ぴーぷる・ぴーぷ」には、
たくさんのお客さんがあの古いドアを開けて訪れています。
週末であれば、順番を待つお客さんが、お店の外にまで溢れているかもしれません。
そして、お店がいっぱいになったころには、
天井の低い半地下の喫茶室も満席になっていることでしょう。

時間の流れが止まってしまったかのような、静かな空気をいっぱいに満たして。
 
 

     
     

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